Dominoを使ったスケッチ

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最近のテーマ、テンションとインスピレーションの発露、その実現プロセス。
鉄と鍵盤は熱いうちに打て。楽器というものはやりたい時やれるものでなければ駄目だ。優れた武道家が日常において常在戦場の心得を持つが如く、作曲に身を置くならばすぐさま音を出し書き留める環境が必要だ。その手段としての MIDI 機器と DAW であるが、これは遅すぎる。Cubase だの Live だのモジュールを読み込む DAW の立ち上がりは精神にとって久遠の如きタイムロスだ。オーディオ統合環境だの VST だのは省いてもいい、もっとインスタントな環境をこそ求める。やりたい時音が出て、それを書き留める、それだけに特化した環境。
そういった理由で MIDI シーケンサに着目した。DAW にその地位を簒奪されて久しいシーケンサだが、その死中にこそ活を見出すのだ。
音声処理を伴わない純粋な MIDI シーケンサのメリットは、

  • オーディオデバイスを占有しないためプロジェクトに読み込むことなくネイティヴ環境の音源を再生できる
  • DAW とは比較にならない高速なアプリケーションの立ち上がり

この2点に尽きる。
MIDI シーケンサには定評のある国産フリーウェア Domino を導入した。立ち上げると既にピアノロールとイヴェントリストが開いている。これだ、この速度こそ今欲しい。

導入・設定・運用

環境設定から MIDI の入出力デバイス設定を済ますだけで使えるようになる。

ピアノロール

ピアノロールでの編集は選択・作成・削除ごとに選択ツールを逐一変更する必要があり、やや冗長。F5 がセレクトツールとドローツールのトグルになっているのでマウスのサイドボタンに振っておき、マウスジェスチャDelete を送れるようにしておく。これでピアノロール編集に際し GUI ボタンや キーコマンドから開放された純粋なマウスオペレーションが可能になる。

リアルタイム入力

Ctrl + R でリアルタイム入力。メトロノームを鳴らすには環境設定から MIDI Output にMicrosoft GS Wavetable を追加しておけばメトロノーム設定で選択できる。

ステップ入力

ステップ入力のキーコマンドは初期で割り振られていないので適当に*1 Shift + S に振っておく。このステップ入力は特筆すべき優秀な機能だ。他の DAW がどうだか知らないが Cubase では相当頭を捻らないと実現できないタイ入力が簡単にできる*2
鍵盤を押しながら Spaceデュレーションを1ステップ延長、鍵盤を押さずに Space でカーソルを1ステップ進める。これだけ機能をつけてもらえればステップ入力の打ち込みスピードはリアルタイム入力すら凌駕することが可能だ。作者に惜しみない賞賛を贈りたい。Steinberg には爪の垢を飲ませてやりたい。

ひとまずこれだけできればスケッチ用途としては充分である。書き留めたフレーズは SMF でレンダリングしておき後ほどお気に入りの DAW に放り込んで心行くまで料理すれば良い。時を選ばず作曲の端緒をつけられることが何より大事なのだ。

余談

実は Steinberg プロダクツにも似たようなスケッチ構想概念は存在している。Sequel というエントリーユーザ向けのループベース DAW があるが、これには MIDI ループと呼ばれる ソフトシンセ、VST エフェクト、MIDI シーケンスといったフレーズ要素をひとつのファイルフォーマットにまとめる機能がある。Sequel で作成した MIDI ループは Cubaseサウンドフレームから閲覧・呼び出しが可能だ。
まさにネタ出しに最適な機能なのだが、MIDI ループファイルは Sequel でしか作成できない。Cubase 上でオートメーションを含めたシンセフレーズを作り溜めておければ随所で使いまわせてさぞ便利だろうとは思うのだが、ソフトとしてのスケッチ性は Cubase と大差ない(と思われる) Sequel をわざわざネタ出し用に使い分ける利点を残念ながら僕は知らない。1万円そこそこのソフトの機能くらい、10万円を超えるソフトにはつけておいて欲しいものだ。

*1:僕の Cubase と同じキーコマンド。キーコマンドは使用するソフトを通じてある程度共通にしておかないと後々頭がこんがらがって悲惨なことになる

*2:Cubase のタイ入力については後日別稿にて取り上げる予定