Virus TIを外部エフェクタとして使う

今更な話だが、Virus TI はハードウェア DSP エフェクタとして使える。外部入力に Virus のフィルタやディストーションをかけることができる。別に Virus に限らずたいていのシンセサイザには Ext In が用意されており、オシレータの通り道にあるフィルタエンジンやエフェクト、ヴォコーダを利用できるのだが、Virus TI の場合は VSTi から制御を行えるので Waldorf AFB16 のごとくソフト/ハード統合エフェクタとして扱えるのが面白い。

やり方

まず前提として4アウト以上のアナログアウトを持つインターフェイスが必要。一般に 1-2out をメインアウトとして使うので、ここに DAW のマスターアウトプットチャンネルを送る。これを便宜上 Stereo1 と呼ぶ。IF のルーティングで 1-2out に Monitor Mixer (IF ミキサ内の全チャンネル出力をまとめて IF の Main Out に送る機能) が出力されるように設定している場合はそれを解除しておかないと後で音が混じるので注意する。
次に、エフェクトをかけたいトラックを送るためのアウトプットチャンネルを用意する。これを Stereo2 と呼ぶ。Stereo2 を Virus のアナログインプットに接続する。これで準備完了。
エフェクトをかけたいトラックの出力先を Stereo2 に設定しておく。Virus Control を呼び出す。Virus TI はマルチパートなのでどのパートをエフェクタとして使うか選ぶ。選んだパートの FX セクションで Input から入力モードを選択する。Off で入力無し、Dynamic でパートへの MIDI ノートオンをキーインにして入力、Static で流れっぱなし。
エフェクトされた音はアナログ、S/PDIF、USB オーディオのどれからでもリターンできる。デジタルから戻すと使い勝手はソフトエフェクタと何も変わらない。返しのチャンネルの送り先を Stereo1 にしておくこと。Stereo2 と混じるとループバックして機材の健康を損なうことに。
特筆すべきは、この外部入力エフェクト機能と通常のシンセサイザ機能を同時に使えること。入力は 2ch なので複数系統の外部入力を個別に処理はできないが、出力はアナログ6ch + USB デジタル4ch の合計 10ch で外部入力の返しとシンセ音を DAW 上でパラ受けできる。このあたりのポテンシャルの高さも Virus TI の大きなアドヴァンテージだ。

エフェクト

外部入力に対するエフェクトとして使用できるのは、フィルタセクション、LFO および Mod マトリクス、FX セクションの EG を除く全エフェクト。外部入力をオシレータ扱いにして FM したりするのは無理。フィルタはエンヴェロープ以外の全機能を使える。
Virus TI のフィルタ構成はマッドだ。フィルタセクションにある2基のフィルタの他に、Amp サチュレーションの ヴァリエーションにあるフィルタとディストーション FX のヴァリエーションにあるフィルタがあり、最大で同時に4系統のフィルタをかけられる変態仕様となっている。
フィルタの色のほうは、普通に使えばいかにもデジタルなスパスパ切れるフィルタで、2基のフィルタを直列同期させて-36dB/Oct で使うと嘘みたいに落ちる。だがひとたび歪み系を Amp サチュレータ、Filter サチュレータ、ディストーション、アナログブースタ からよりどりみどり好き放題かませればとんでもない暴れたサウンドに化ける。どんなに歪ませてもバカみたいにゲインがブーストしたりしないので心おきなく音の破壊にいそしめる。
自分のリファレンス音源をエフェクトしてみるとただシンセサイザとして使っている時には気づかなかった特性が見える。フィルターのアナログシミュレーションモードは驚くほど歪むし、ディストーションは Type Off 以外を選択していると Intensity ゼロでも歪んでいる。
フィルタと歪みばかり書いたが他のエフェクトも良い。Virus TI の6ステージフェイザは隠れた最高級品だと思う。これに周波数のマニュアル制御か BPM シンクと LFO シンクができれば完璧だった。HyperSaw で分厚いフェイザパッドの白玉を作ったはいいが発音数が足りなくなってしまう場合に、パッドの和音を分解して複数パートにドライ録音したものを外部入力としてまとめてフェイザに突っ込みなおすという荒業が使える。リヴァーブはどうにも鉄板くさい音だが意外と大箱クラブの鳴りに近いのでシンセによくハマるし、ディケイ最大で30秒以上リヴァーブが続くアビスサウンドを作れる。みんな大好きヴォコーダもある。ディレイもコーラスも EQ もある。これらを全部、同時に、パート個別に使えるという、マルチエフェクタとしての威容をも誇る。

終わりに

DSP/VSTi シンセサイザとして注目を集める Virus TI だが、DSP エフェクタとしても刺激的なデバイスである。なお Powercore または TDM 版の Virus プラグインなら完全ソフト処理で Virus フィルタを利用できる。環境があればこちらも魅力的な使い方ができることを最後にお伝えしておく。