MIDIコントロールによる断続カーヴ・オートメーション

カーヴタイプに傾斜しか使えないオートメーション (AM) でジャンプを手っ取り早く擬似的に実現する方法。

準備

  1. エフェクトの AM の場合、使いたい種類のエフェクトの中から MIDI 入力に対応したプラグイン*1を選ぶ。
  2. AM したいパラメータをコントロールチェンジ (CC) で動かせる状態にする。
  3. MIDI トラック を作成、アウトプット先に AM したいプラグインを接続。

これで準備完了。やり方は2つある。

Step Designerを使う


MIDI Insert に Step Designer を呼び出す。Controllers Setup から AM するパラメータの CC ナンバーを選択。帯グラフ状に CC を記入できる。
Step Designer は放っておくと無限にシーケンスをループしているので、初期画面の Pattern 1 を空白としておき、Pattern 2 以降をエディットしていくと良い。パターン進行は MIDI ノートで操作できる。Pattern 1 = C1 から順に対応している。

Note 2 CCを使う


MIDI Insert に Note 2 CC を呼び出す。このエフェクトは、マニュアルのプラグインリファレンスによれば

入力される各MIDI ノートに対応して、MIDI コントロールイベントを生成するものです。コントロールイベントのコントロール値は、ノートナンバー(ピッチ)に対応します。

と説明されている。が、これは真っ赤な嘘で、実際にはノートナンバーに関係なくノートオンヴェロシティに感応して CC 値に変換される。MIDI トラックにノートを打ち込めばそのヴェロシティ値が CC に変換される。ノートオンされていない間の CC は常に0となるので、MIDI ノートは間を空けずに打つこと。

使い分け

それぞれの方法の利点。Step Designer は1台で2つのコントロールを送れる。また、1つのウィンドウでパターンを全て確認できるのでパートごとに MIDI エディタを開く Note 2 CC よりパターンを確認しやすい。
Note 2 CC はコントロールにヴェロシティを使うため、ヴェロシティ入力欄を大きく広げたり数値入力するなどきめ細かな編集がしやすい。また、SD のようにステップのクオンタイズが固定されないので複雑なリズムのパターンを自由に組める。

Cubaseのカーヴについて

Cubase のオートメーションエンヴェロープのカーヴタイプは2種類ある*2。Ramp (傾斜) と Jump (飛び値) の2種類で、Ramp ではオートメーションの点と点を直線で結び、Jump では直前の値から直角に曲がる。通常の連続的な変化には Ramp を使うが、値が階段状にガクガク動く、LFO で言うところの Sample & Hold の打ち込みには Jump が適している。
ところが、マニュアルにいわく、「パラメータによって適切なカーブタイプを自動選択します」。これがえらい大きなお世話*3で、ユーザは任意にカーヴタイプを選択できない。PAN やコントロールチェンジなどほぼ全てのオートメーションで Ramp が選択されてしまうが、こっちは Jump だって使いたいのだ。
Ramp で設定されたオートメーションで飛び値を取るには、ポイント A から B に変更するとき B と同じポジションに A の値も併記して (A') 直角の折れ線を書くしかない。この方法は保守性が低いのが難点になる。この手の数値決めはいかに手際よく試行錯誤できるかが重要になり、ポイントを2つずつ (A, A') 範囲選択して上下、範囲選択して上下……というのはかったるくてちょっとお話にならない。
上に紹介した方法は双方ともポインタの一筆書きでザクザク Jump を書ける。フィルタあたりのエフェクトなら付属の Step Filter を使えば済む話なのだが、この方法ならお気に入りのフィルタを使ってステップフィルタを作れる*4。しかし一度 CC に置き換えているため127以上の分解能を持つパラメータだとオートメーションしている正確な数値は分からなくなるので、サウンドメイクに使えてもミックスの段階ではあまり頼りたくない手法と言える。次のヴァージョンではカーヴの種類を自由に選べるようにして欲しい。

*1:プラグインを立ち上げると MIDI トラックのインプット/アウトプットに選択できるようになるもの。

*2:Cubase 4 のオートメーションエンヴェロープはあまり充実しているとは言えない。カーヴタイプが2種類しかないのは、言い変えれば関数曲線が用意されていないということだ。一応、おおまかな形の自動形成として数種類の関数があるにはあるが、それらも最終的に直線の組み合わせ (Ramp) で代理的に実現される。範囲が127しかないコントロールチェンジならまだ話はわからないでもないが、範囲が 20000Hz にも及ぶフィルタや ±4096 のピッチベンドに二次関数曲線を使っても3ポイント2ラインのカーヴで表現されるのはさすがにお粗末としか言い様が無い。

*3:基本的にバイパス等のボタン類以外のパラメータは全て Ramp に振られる。以前 Cubase 4.1 にアップデートした際に、あるシンセで本来 Ramp で動作するべきパラメータを全て Jump に誤認識するバグが起きた。仕方ないので解像度は落ちるが VST Remote をコントロールチェンジに移植して対応した。自分で Ramp / Jump 切り替えができさえすればこんな不具合に悩む必要も無かったと思うと今でも腹が立つ。

*4:MIDI 入力に対応している必要はある。