耳栓のスゝメ

http://1st.geocities.jp/mimisen_hikaku/image3.gif
人生において最高のコンディションで音楽を聴ける回数は有限である。音楽を愛する人間はこの事実をかみ締めるべきだ。

パーティーにおいて何が嫌かと問われれば下手糞な DJ が際限なく音量を上げていくほど不快なことはない。ミックスが下手なDJはその手腕により生じるトラックの勢いの減衰をゲインの増量で誤魔化そうとするためだ。結果ミキサーの VU メーターはレッドゾーンをぶっちぎりフロアは阿鼻叫喚の音地獄に陥る。事ここに至ってなお DJ ブースではフロアの音を把握できないという状況がこのネガティヴループに拍車をかける。DJ が難聴になるのは勝手だ付き合わされる方はたまったものではない。
耳とは命と同じ、一生かけて使う消耗品である。刺激により経年により外有毛細胞は死に絶え聴覚神経は寸断されていく。換えのきかない消耗品なのだ。使えば使うほど耳は劣化していく。劣化が不可避でも耳をどう使うかは選びたい。無駄な音など 1dB たりとも耳に入れるべきではない。自衛力が必要だ。

Moldexの耳栓を試す

耳栓を買う。クラブで使うためだけの耳栓なのでとにかく遮音性の強力なものを探した。海外製の評判が良いようだ。耳栓 比較資料から Moldex 社にあたりをつけて、3種類ほど試用した。国内では商業流通していないので個人輸入家からネットオークションを通じて購入できる。

//www.moldex.com/canada/foamplugprod/camoplugs.htm">Camo Plugs:Moldex の標準プラグ。野戦迷彩風のマーキングが物々しい。僕には少し大きいようで許容し難い圧迫感があった。体格差と同じように耳の大きさにも欧米人と日本人では差があるのだろうか。少なくとも女性にはあまり向かないと思う。
//www.moldex.com/canada/foamplugprod/sparkplugs.htm">Spark Plugs:Camo より一回り細い。アメリカ最大のモータースポーツ統括団体 NASCAR の公認とのこと。僕の耳にはこれが適っていた。遮音性能は Camo と違いを感じない。
//www.moldex.com/canada/foamplugprod/purafit.htm">Pura Fit:Camo より太いが柔らかい。これはうまく耳にはまらなかった。装着にコツがいる。Camo 同様耳の小さい人には向かないと思われる。もっとも、自分の耳の大小を知る人間なんてそういないだろうが。

装着

スポンジ状であり装着には先を丸めて耳に挿入しスポンジが膨張するのを待つ。手早くやっても完了に30秒程度かかるのは実用面での不安を残す。一旦装着してしまえば外界の音はほとんど遠のく。
代わりに体内音の大きさに驚かされる。強く耳を塞ぐと聞こえるあの地鳴りのような音。血流、筋収縮、関節稼動、その一挙手一投足に気が狂いそうな音を立てる。これではとても安眠などには使えないだろう。耳栓を外した方がよっぽど静かなくらいだ。

遮音性能

装着すると手で耳を塞いでも音の聴こえ方に変化がなくなる。テレビの音程度ならほぼ完全に聴こえなくなる。会話は充分可能だが相手の声よりむしろ自分の発音を確認し難いため滑舌に影響が出る。
音楽をかけてみると、ハイハットの音が完全に聴こえなくなることから 3kHz より上は断絶する。サブウーファーのみの音もほとんど感じられないので 100Hz 以下も大幅に低減される。その他の音域はバランスを保ちつつ遮音される。

総評

遮音性能には全く問題ない。むしろ感動的ですらある。しかし装着の手間および装着感には不満がある。多少性能に劣っても素早く着脱可能で装着感の良好なものを探すべきかもしれない。
耳栓はカタログスペックよりも自分の耳に合っているかどうかが大事だ。耳の形状に適合しないと本来の性能を発揮できないばかりか耳を傷つけてしまう。もっとも本質的にはいかなる耳栓だろうと耳にダメージを与える潜在的な可能性があるので、そもそも耳栓を使うような状況を避けるのが最大の自衛であることに変わりない。しかし、音楽イベントを楽しみ、かつ耳の保護を考えるのならば、耳栓をひとつポケットに忍ばせておくのが賢明だ。