占術八卦ジャンル四十八手

僕は血液型別性格診断だの星座占いだのをさっぱり信じないので、その手の話題を真面目な顔で話されると宇宙人に電波を放射されているような気がしてくる。僕の周りにはあまりないが、細分化極まるジャンル定義論みたいなものを聞かされると同じような気分になる。アホかと思う。論拠を聞けば聞くほどこじつけくさい。どうあっても自分の歪んだ了見で物事をカテゴリ分けしないと気の済まない連中というのはいるものだ。あまつさえそのジャンル定義をアーティストに押し付けるなど言語道断である。なにも本質的に違うものを一くくりにしろなどと乱暴なことを言うつもりはない。僕もアレとコレをクソミソ一緒にされると困る。クラブミュージックにはジャンル名がうじゃうじゃあるので知れば知るだけ知ったかぶりできるが、本流の呼び名のみ押さえておけば、他は些事である。とは言えその本質の解釈が人それぞれだからこそ論争になるのだろうが。大本のジャンル名以外はアレグロだのアルデンテだのセンテンスの中で適当に形容しておればよろしい。変にジャンル名と結びつけるからペダントリーが起こる。
少しぼかしすぎたかな。いくつか例題を設問しておくのでお暇と興味のある方は考えてみるとよろしかろ。

例題

初級編

Astral Projectionはイスラエルトランス、ゴアトランスのどちらに分類すべきか。

中級編

Dutch Trance と Epic Tranceの違いを述べ、それぞれの代表アーティストを3名ずつ挙げよ。

僕の解答は追記部に記しておきます。

解答

では解答です。中級までしかありませんが、上級編は思いつきませんでした。アホらしすぎて。こんな無意味な例題など笑い飛ばしてもらえますと出題者としては本望でござい。
まず、こういう問題にまじめに取り合うアホらしさを実感していただきたい。次に、僕の解答を絶対正答というつもりはありません。大きく外れてはいないと自負しますが結局僕の解釈なので。それから、卑小なジャンル分け自体はアホらしいですがその理由までふざけてはいません、そこはお取り違わぬよう。

解説初級編

今日のサイケデリックトランスシーンはサイケデリック（イスラエル、フルオン）とゴアで大きく二別できる。と思っている人はここ数年CD買ってないってくらいイスラエルサイケ一色の今日この頃だがそれはともかく。Astral Projection（以下AP）の代表的な音楽性がゴア寄りなのは特徴的な音階や音色から間違いない。というのも不遜、APがゴア寄りなのではなくゴアシーンがAP寄りなのだ。ああ偉大なりAP。だがしかしAPはイスラエル在住のアーティストである。イスラエル人が作ったトランスはイスラエルトランスじゃないのか、という素朴な疑問が話をややこしくする。さらに彼らのリリースには「〜 goa」だの「Israel〜」だのいうコンピレーションがごろごろしている。このどちらを手に取ったかでも意見が分かれるところなのだろう。
さて、設問ではどちらに分類すべきかとしたが、僕ならこの二択では分類しない。左のようなややこしい解釈定義に付き合っていられないからだ。故ただ単に「サイケ」とだけ呼ぶ。他のサイケデリックも全部サイケと呼ぶ。サレガマパダニなギットギトのインド音階が炸裂した時だけゴアスメルがするなあなどと感慨にふけっている。

解説中級編

Dutch Tranceというジャンルは額面通り受け取ればオランダ産のトランスということになるが、メロディアスなビッグブレイクタイプの、いわゆる往年のトランスクラシックスを特に指し示す別義がある。
Epicという単語は何と訳すのが適当なのだろうか。ここで叙事的などと抜かすやつは普段使わない言葉を使って喜んでいるエセスノッブと断定する。トランスはどう考えても叙事的ではなく叙情的な音楽である。その意味で用いられたのであればEpicではなくLilycが相応しい。よって、せいぜい雄大や壮大といったところか。なんとも感覚的で、とても器楽的論拠を導ける言葉ではないのだ。
ここまで書けばたくさんだと思うが、そもそも両者とも定義の流動的な言葉で、しかも指し示すジャンルの範囲は重複している。とどのつまり、「どっちでも同じ、綺麗目のトランスを表現する記号」だ。ヨーロピアントランスとくくれば早い。代表アーティストのくだりはどうでもよさを際立たせるために書いただけ。往年のFerryさんでもRank1でもAtbでも好きな人を挙げるとよろし。初級編に続きこちらも正答無しの設問意図で恐縮だが、根本的にどうでも良さを伝えたいがための例題なのでご容赦いただきたい。

ジャンルなんて呼びたい人が勝手に呼んだだけで、大本から細分化しているのではなくただ乱立しているだけです。ゆめゆめ真面目に取り合わぬよう。