興奮の Winter NAMM 2008

アナハイムで開催される世界最大の電子楽器展覧会 NAMM ショウ。今冬の新製品は特に意欲的なものが多く、次世代 DTM の到来をひしひしと感じさせてくれる。中でも特に興味深く感じている製品をいくつか紹介する。情報源は毎度おなじみ Rock on の NAMM レポートから。

Access - Virus TI Snow

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http://www.access-music.de/snow/
Access から Virus TI シリーズの新モデルが登場。ポリフォニー/パート数を落とした他は先行のモデルと同様のスペックを備えている。必要最小限のインターフェイスを備えつつ携行性に長けるミニボディが魅力的。何よりその名前。僕のためにあるシンセとしか思えない……。このサイズならライヴに持っていくのも手軽だし、Desktop との入れ替えを検討したい。価格は $1.350, 4月リリース予定。

Waldorf - Blofeld

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http://www.waldorfmusic.de/en/products/blofeld/blofeld_overview
Waldorf からもミニサイズの VA が登場。小さなボディと裏腹に "Q" の全オシレータ、Microwave シリーズの全 Wavetable を搭載しており、しっかり名機の魂を継承している。USB 端子は用意されているものの VST に関する記述はなく、DAW との連携性が不明なのは残念。ミニサイズシンセの欠点は本体でのエディット性に欠ける点にあるため、最低でもソフトウェアエディターは欲しい。国内実売8万円台、2月リリース予定。

Lexicon - PCM96

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http://www.lexiconpro.com/AES_Events.aspx
リヴァーブの老舗 Lexicon から PCM シリーズの最新モデルが登場。アウトボードリヴァーブでありながら、PC と FireWire 接続によりプラグインリヴァーブとしても動作するという驚異のハイブリッドマシン。これには度肝を抜かれた。ハードエフェクターとしても使えるアウトボード DSP ユニットといったところ。ありそうでなかった発想。今後こういった真の意味でハード/ソフトの融合が加速していくものと思われる。

Dave Smith Instruments - LinnDrum II

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http://www.davesmithinstruments.com/products/linndrum2/index.php
DSI から、なんと LinnDrum が蘇る。さらにマニアックなことに、本製品には音源方式でアナログモデルとデジタルモデルの2モデルで提供される。僕が思うにデジタルテクノロジーの次世代の課題は「デジタルでアナログを制御する」ことなので、この LinnDrum II アナログ版なんかはその一歩と言える。アナログ版は DSI, デジタル版は本家 Roger Linn から発売。それにしても、DSI のシンセデザインの流麗さはただごとではないね。

Spectrasonics - Omnisphere

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http://www.minet.jp/spectrasonics/?cat=7
Spectrasonics から Atmosphere の後継機が登場。サウンドエンジンを Stylus RMX ライクな STEAM エンジンに移植し、8パートマルチとなっているほか、最適化前で 40GB のパッチ、数々のハイブリッドシンセシスを搭載、Stylus RMX との連携機能もある模様。価格はおよそ $500, 9月リリース予定とのこと。これ、購入決定です。今から待ち遠しい。
Rock On のレポートムーヴィーで音源の収録風景が見られる。ピアノを燃やしてレコーディングする様にはエリック・パーシングの狂気を感じる。

SkyLife - SampleRobot 3

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http://www.samplerobot.com/index_b.php
ドイツの SkyLife SoundDesign 社が開発、韓国の ESI が流通を行っている国内未発売品。ハードシンセのサンプリングを自動実行しライブラリ構築を行うソフト。VSTi サンプリング・サンプラーである DiscoDSP - HighLife のハードシンセ版のようなものらしい。詳しいことはわからないが、ハードシンセを簡易ソフト化できるという認識でいいのかな。もし実用的なレヴェルであればかなり魅力的である。国内未発売ということで情報に乏しいが、幸いデモヴァージョンが公開されているので、後で検証してみたい。

総評

今回の新製品にはテクノロジー面で魅力的なものが多かった。ソフト/ハードのハイブリッド、アナログ/デジタルのハイブリッド、といったテクノロジー有機的結合がいよいよ台頭してきたことを感じさせられる。PC ベースで作曲している自分には願ったり叶ったりの状況であり、どんどん進化していって欲しい。
逆に残念だったのは国内メーカーの惨状だ。やけくそ気味にハードシンセを乱発している KORG はしかし DJ ギアでかなり魅力的な名機を輩出しているのでまだ救いがあるが、Roland にはがっかりだ。未だに Fantom シリーズやら SP シリーズの最新作を発表、なんてやっている。呆れた。ソフトシンセと違いバージョンアップの効かないハードシンセにおいてこうも同系の新製品を続々リリースしていては客離れを起こすだけにしか思えない。YAMAHA にはもはや DTM 市場にアピールする気概すら感じられない。ソフトウェアベースに流れる時代だからこそハードウェア開発力のある国内メーカーができることが必ずあるはずだ。頑張って欲しいと思う。