アナログを楽しむ

僕のスタジオからターンテーブルの火を落として随分経つ。レコードでしか持っていないような曲は全部録音してデジタルデータで所持していたが、今は故障したHDDに閉じ込められている。久々に聴いてみようと思い立つ。しまってあったDJミキサーを引っ張り出して配線。スピーカーへ出力するにはPCのAudio IOへコネクトする必要があるが、ケーブルの長さが足りないのでこれまた眠らせていたアナログ16chミキサーにお目覚めいただき、中継。準備完了、いよいよTechnics SL-1200mk5に灯りをともす。レコードを選ぶ……雑然としたラックを探すのは大変だ。レコードをターンテーブルに乗せて針を落とす。回す。この手作業感は久しく忘れていたなあ。ここでアナログならではの音の暖かみなどに感動するほど歳食ってないので、ローファイだと思うだけだが。アナログのシステムには特に気を使っていないし、Shureの針では仕方が無いや。プチプチとノイズが乗るのはハードウェア的仕様として納得するものの、奇妙にHighが持ち上がっていたり、音痩せしているのには辟易させられる。しかし好きな曲を聴くのにこれだけの儀式的手間があるというのは楽しいな。一種の愛着行為だ。悪くないね。これはコーヒーを自分で挽いてドリップする感覚に似ている。雅な趣がある。デジタル配信はどうも缶コーヒーくさくて味気ない。自分は意外とムラ社会ビトなのかな。人間的手作業感の価値観が全てに優越するとは思わないが、ソフトウェアに留まらない包括的トータルパッケージングは商品価値を確実に高めると考えている。楽しめるプロセスは一つでも多いほうが良い。